油圧ショベルの燃料タンク容量の設計手順をわかりやすく解説

技術

大きい方が良いとは思いますが程度がありますよね。

たまに見かける建設機械。車に比べて大きな機械だから燃料タンクも大きいです。

では実際の設計者はどうやっているのでしょう。

「燃料タンクの容量ってどうやって決めてるの?」

「競合機とおなじか少し多めにしとけばいいんじゃないの?」

という疑問や悩みについてお答えします。

(以下、油圧ショベルの燃料タンクを例に設計手順を説明していきます。)

必要な稼働時間を決める

まずは顧客の現場での稼働時間や、シフト時間、給油のタイミングを考慮して必要な稼働時間を決めます。

たとえば、1日8時間勤務で2時間残業だから10時間とか。

だから10時間に1回給油でも足りるタンク容量にすればいいなとなる。

(理由は給油のタイミングは周囲の機械とほぼおなじタイミングになるので(ならないと効率が悪い))

必要な燃料の使用量を求める (Ve)

次にエンジン出力燃料消費率と必要な稼働時間とから必要な燃料の使用量を求めます。

あくまで燃料タンクの容量を決めるための計算なので、エンジン出力と燃料消費率はめっちゃ仕事する前提で定格出力時の値を使用します。あとは各企業の考え次第ですが、ずっと100%全開で仕事することはないとか、待ち時間がどの程度あるなどを考慮して0.8とか0.9掛けで計算することもあります。

Input 例
  • エンジン出力 P:197kW
  • 燃料消費率 b:210.7 g/kWh
  • 稼働時間 t:10 h
  • 作業負荷係数 ζ: 0.8

$$Ve=\frac{bPtζ}{ρ}$$

エンジン:Isuzu(UM6HK1WM-AB2)、 P:197kW、b:210.7g/kwh

→タンク容量500L(ZX300-6)

(船舶用のエンジンだけど)エンジンデータ引用元:http://www.systemkyokai.or.jp/osirase/syouenekikidounyuusuisinn/engine_hikaku.pdf

使用できない容量を求める (Vd)

建設機械を給油するときの環境は車にガソリンスタンドで給油するような環境とは違うことが多く給油中の燃料へ砂塵などの不純物が混じることもある。これらの不純物の沈殿と燃料中の水分が沈殿したものをエンジンに吸い込ませないように、通常はタンク底部の一定量は吸い込めないように吸い込み口を底上げしている。

この容積はタンクの形状に依存するので実際のタンク形状設計の際に最終的に決まる。ここではあくまでも仕様決め段階なのでおおよそで上記必要な燃料使用量の5%等(これは各社の経験値による)でみておく。

実際のタンク設計の際にはタンク底部に水や砂塵などの不純物の堆積を考え、燃料の吸い込み口をタンク底面からある程度底上げしておく。その高さにより実際の使用不可容量:Vdが決まる。

$$Vd=Ve\times0.05$$

燃料の膨張を考慮する (Vt)

燃料も少なからず温度変化に対し体積変化を生ずる。

燃料タンクの容量としてその体積膨張分を考慮しておく。

具体的には、燃料の温度膨張係数として5%を見込む。
(体積膨張率から考えるとおおよそ40~50℃の温度上昇に相当)

$$Vt=Ve\times0.05$$

必要なタンク容量を求める (V)

最後にこれまでに求めた3つの容積をすべて足し合わせて最終的に燃料タンクの全容積を求めます。

$$V=Ve+Vd+Vt$$

計算例

$$V=\frac{bPtζ}{ρ}(1+0.05+0.05)$$

INPUT
  • b: 燃料消費率 [g/kW.h] 210.7
  • P:エンジン定格出力[kW] 197
  • t:稼働時間 [h] 10
  • ζ:作業負荷係数 [-] 0.8
  • ρ:燃料密度 [g/L] 840

 ※燃料消費率:BSFC(break specific fuel consumption)
 ※燃料膨張係数:5%、タンク底部の不使用領域容積:5%として計算

上記INPUT値を基に計算すると、

  V: 燃料タンク(全容積)[L] 435L

となります。

スペック比較の記事↓で油圧ショベルの燃料タンク容量についてのデータがあり、エンジン 出力197kW付近でみると運転質量がおよそ30tくらいであり、その運転質量30tクラスの燃料タンク容量をみると概ね470 L 付近となっています。

まとめ

以上、建設機械の燃料タンク容量の設計手順を解説しました。

なんで燃料タンクはこんなにデカいんだという疑問が少しでも解けたのではないでしょうか。

細かな条件などはメーカーにより考え方が違うこともあると思いますが、
設計にたずさわる方は本内容を参考にぜひ自分で設計にトライしてみてください。

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