皆さん防振ゴムってご存じですか?
防振ゴム、ラバーマウント、ラバークッションなど呼び方はいろいろありますが、物を振動から守る役割を果たしている部品です。

建物にも使われているって聞いたことあるよ

そうだね、地震の揺れを建物に
伝わらない様にしている免振用のものだね。

防振ゴムを使用しないと機械が振動により早く壊れてしまったりします。振動を発生するその物自体もそうですし、その周りの部品が受けた振動により故障したり誤動作の原因にもなったりすることもあります。
また、壊れないにしても機械から発生する振動によって人間にも不快感を与えたりもします。
本記事ではエンジンを支持している防振ゴムを例に計算のやり方を解説していきます。
防振ゴムの取付と性能
●荷重は防振ゴムの圧縮方向で受ける
荷重の発生方向に対して防振ゴムは圧縮方向でうけるように配置するのが一般的です。
●重心より外側に設置
エンジンを支持する防振ゴムは概ね前後左右で合計4ヶ所設置するのが一般的です。
もちろん重量や重心などにより6ヶ所にしたりする場合もあります。防振ゴムが支持する荷重が大きければ防振性能は高くなりますが耐久性が低下するため、支持する荷重と防振ゴムの許容荷重とを見比べながら防振ゴムの数量および配置レイアウトを決定しましょう。
また、配置レイアウトの注意点として、防振ゴムの設置位置は重心より外側に配置します。防振ゴムより重心が外側にあるとモーメントが発生し、片側の防振ゴムに引張り力が加わってしまいますので注意しましょう。


●振動伝達率の目安
振動伝達率とは振動発生源からの振動が防振ゴムを介すことによってどれだけ小さくなったかを表しています。振動伝達率が1だと全く減衰できてませんし、0だと完全免振状態です。
また、振動伝達率が1を超えるということは、振動発生源が発する振動以上の振動になっている=共振していることになります。

グラフ中の振動数比 λとは振動源の振動周波数 fと振動系の固有振動数 fnの比、つまりλ=f/fnのことを表しています。

振動を減少させるために防振ゴムを使うのに
共振して逆に振動が大きくなっちゃったら
意味ないからね

僕が振動マシンに乗った時に、お腹の肉がすごく
ブルブル震えるあの現象のことだな

そ、そうかもしれないね(汗)
でも、そっちは逆に効果がありそうだけど。。
どんなこと計算すればいいの?
●支持荷重を計算
防振ゴムが受ける支持荷重を計算するには、まずはエンジン等の合計重量と重心が必要ですので調べて用意します。
次に防振ゴムを配置する位置を決めて用意します。
エンジン側で取付位置が概ね決まっているので防振ゴムの配置位置はほぼ決まっています。
求める各防振ゴムの支持荷重で、以下の計算式により計算します。
本記事では4点支持をモデルとした計算をします。
\begin{equation} \begin{split}Wf=W×\frac{Xr}{Lx}\end{split}\end{equation}
\begin{equation} \begin{split}Wr=W×\frac{Xf}{Lx}\end{split}\end{equation}
※上記 Wf、Wr はエンジンの左と右の合計の荷重だから防振ゴム1個あたりだと÷2となる。
- W: エンジン等の合計重量 [N]
- Lx:防振ゴムの前後方向支持距離 [mm]
- Xf:前側防振ゴムとエンジン重心間距離 [mm]
- Xr:後側防振ゴムとエンジン重心間距離 [mm]
- Wf:前側支持荷重(左右計)[N]
- Wr:後側支持荷重(左右計)[N]


エンジンの横方向(クランク軸中心直交方向)
の重心のズレは考慮しないので単純に÷2と
しているよ。
●振動源の振動周波数を計算
エンジンの回転数はアイドル回転数~最高回転数まで範囲があるけど、全範囲をカバーするならアイドル回転数で計算しておけばOKです。(エンジン回転数が上がるほど振動数比 λは大きくなる為)
エンジンの振動周波数は以下の計算式により算出します。
\begin{equation} \begin{split}f=\frac{N×i}{120}\end{split}\end{equation}
- N:エンジン回転数 [rpm]
- i:エンジン気筒数 [-]

上記は4サイクルエンジンを
前提とした計算だよ
●目標とする振動系の固有振動数を計算
まず使用する振動系ではどの位の振動伝達率にしたいのかを決めます。

振動数比 λは通常2~3程度を取るので、目標とする振動伝達率は0.13~0.33程度で設定することになる。
設定した目標とする振動伝達率より、振動系の固有振動数は以下の計算式にて算出します。
\begin{equation} \begin{split}fn=\frac{f}{\sqrt[]{1+\frac{1}{τ}}}\end{split}\end{equation}
- τ:目標振動伝達率 [-]
- f:エンジンの振動周波数 [Hz]
●必要とする防振ゴムのバネ定数を計算
これまでに算出した支持荷重と振動系の振動周波数より、必要とする防振ゴムのバネ定数を求めます。
エンジンの前側と後側とで支持荷重が異なるのでそれぞれについて計算します。
\begin{equation} \begin{split}Kf=\frac{(2\pi×fn)^2×Wf/2}{9800}\end{split}\end{equation}
\begin{equation} \begin{split}Kr=\frac{(2\pi×fn)^2×Wr/2}{9800}\end{split}\end{equation}
- Wf:前側支持荷重(左右計)[N]
- Wr:後側支持荷重(左右計)[N]
- fn:振動系の固有振動数 [Hz]
- Kf:前側防振ゴムの動的バネ定数 [N/mm]
- Kr:後側防振ゴムの動的バネ定数 [N/mm]
上記の計算したバネ定数はの動的バネ定数なので、防振ゴム選定の際に必要な静的バネ定数は天然ゴムの場合だと÷1.2とした値となる。
●計算したバネ定数より防振ゴムを選定
最初に計算した支持荷重を基に、選定した防振ゴムの許容荷重を確認してください。
計算した支持荷重は静的な荷重ですので、使用上加速度が加わったりする場合はそれも加味して確認してください。

支持する荷重が大きい方が防振性能は良くなるけど
耐久性が低くなるから気を付けよう。
使用環境の考慮

防振ゴムは使用環境により、バネ定数が変化したり劣化が早くなったりします。
バネ定数は温度が低いと大きくなり、温度が高いと小さくなります。ゴムの種類にとり温度特性は違いますので、使用する防振ゴムの温度特性は個別に確認しましょう。
また、オゾンや薬品などはゴムによっては早期劣化を引き起こしますので、使用場所によって曝露や付着の恐れがある場合はこちらも確認しておきましょう。

お肌に良くないのん♪
計算ツール
また、前述した計算ではエンジンの左右方向(クランクセンターに水平に直交する方向)の重心は中心にある前提で計算しました。
本ツールでは実際には重心が左右のいずれかに偏っている場合も考慮して計算できるようにしてます。
具体的には下図(INPUT欄)の寸法を必要とします。
また、前後方向とはエンジンのクランク軸方向で、冷却ファン側が前側としています。
左右方向はクランク軸に水平に直交する方向です。
計算ツールへの入力が必要なパラメータは以下の通りです。
- W: エンジン等の合計重量 [N]
- Lx:防振ゴムの前後方向支持距離 [mm]
- Xf:前側防振ゴムとエンジン重心間距離 [mm]
- Xr:後側防振ゴムとエンジン重心間距離 [mm]
- Lyf:前側防振ゴムの左右方向支持距離 [mm]
- Yfl:前左側防振ゴムとエンジン重心間距離 [mm]
- Yfr:前右側防振ゴムとエンジン重心間距離 [mm]
- Lyr:後側防振ゴムの左右方向支持距離 [mm]
- Yrl:後左側防振ゴムとエンジン重心間距離 [mm]
- Yrr:後右側防振ゴムとエンジン重心間距離 [mm]
- N:エンジン回転数 [rpm]
- i:エンジン気筒数 [-]
- τ:目標振動伝達率 [-]
- α:動倍率 [-]
※同倍率とは動的バネ定数と静的バネ定数の比率のことで、天然ゴム:1.2、ニトリルゴム:2.0として選択。

では下記フォームに各パラメータの数値を入力し計算してみてください。
重心の左右偏心をなくすればKfls=Kfrs、Krls=Krrsとなります。
この計算で得た静的バネ定数を基に製品カタログから防振ゴムを選定してください。
そして選定した防振ゴムの最大支持荷重より計算した支持荷重が小さいことを確認してください。
計算支持荷重は静的な荷重ですので、使用上加速度が加わったりする場合はそれも加味して確認してください。
また、選定した防振ゴムを使用した場合の実際の振動伝達率はいくらになったのか。防振ゴムを設置して振動体を組み付けた際にどの位変形するのか(取付時ひずみ)等のバックチェック用の計算ツールも今後追加していく予定です。
まとめ
以上、今回は防振ゴムの選定のための計算方法と計算ツールの紹介をしました。
本内容を参考にいろいろ試してみてください。
ご不明な点、ご意見等ございましたらご連絡ください。
また、本ブログでは他にも技術計算の掲載をしていますので、興味があればご覧になってください。
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